流水性種からみたボルネオ産両生類多様性の起源を探るため、最終年度もマレーシア領のマレー半島とボルネオ島のサラワク州において野外調査を続行した。得られた標本や組織サンプルから系統分類学的な解析を行ったところ、主に以下の成果が得られた。1)ボルネオハヤセガエル属の形態学的、分子系統学的解析結果から、1隠蔽種を見出し、新種記載した。2)さらにもう1種のボルネオハヤセガエル属の隠蔽種を見出し、印刷中である。3)ボルネオ島を含む広汎な地域でのウデナガガエル属のミトコンドリアDNAの塩基配列をもちいた分子系統解析の結果を専門誌に発表した。4)タイ産のクールガエル属の新種記載を行ったが、その過程で、現在クールガエルとされているボルネオ産の個体群には複数の隠蔽種の含まれることを明らかにし、現在、さらにミトコンドリアDNAの塩基配列をもちいた分子系統解析を行っている。5)サラワク州のクバ国立公園から新種として報道されたカエルは既知のボルネオヒメアマガエルであり、同種とされていた大形の種が新種であることを確認し、記載した。6)これまで広域分布種の一部とされてきたマレー半島南部のチョボクチガエルが、未記載の隠蔽種であることを音声学的、形態学的、分子系統学的に確認し、現在投稿準備中である。7)ボルネオ及びマレー半島産のアシナシイモリ類の追加標本の採集に成功し、分子系統解析を終えて、現在投稿準備中である。8)ホソウデナガガエル属について、今年度もさらに多くの地点からのサンプルを入手して分子系統解析を行い、ボルネオ島産は大陸産とは独立の系統であること、未記載の隠蔽種が存在することを再確認した。この成果を学会発表し、現在投稿準備中である。9)3年にわたる研究成果から、ボルネオの両生類ファウナは高度の固有性をもち、極めて古い時代に周辺地域から孤立して独特の進化を遂げたことが明らかになった。
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