本年度は米国東南部および中南部の州を重点にして、8月に2週間にわたって畑作の現地調査を実施した。また、2月に行われた米国雑草科学会(WSSA)に出席して情報を収集するとともに、雑草種の同定のために専門家に米国での雑草種の標本調査を依頼した。 グリホサート耐性遺伝子導入作物畑でのグリホサート抵抗性雑草による被害は深刻であり、各州の大学圃場ではグリホサート抵抗性雑草対策のための試験が多く行われていた。その対策としては、発芽前後の土壌処理除草剤やearly-post処理除草剤等との体系防除、また複数の除草剤耐性遺伝子を導入したスタック品種の創出であった。除草剤耐性遺伝子導入作物による雑草防除技術の長所であった1)除草剤のコスト削減、2)防除回数の低減等の効果がなくなり、複数の遺伝子を導入した作物の作出は消費者への不安を一層あおることにつながるものである。また、米国では除草剤耐性遺伝子導入作物の普及に伴い新規化合物の開発が断念され、結果として新剤の開発が進まなくなったため、既存の剤に依存した除草体系を行うことになっている。米国では除草剤耐性遺伝子導入作物に依存した雑草防除技術の普及後10年を経て、さまざまな問題を生じてきており、新規作用点をもつ除草剤の開発が熱望されており、我が国の今後の雑草防除技術開発に対しても示唆のとむ結果となっている。これらの調査結果については来年度開催される日本雑草学会において報告する予定である。
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