研究概要 |
2010年8月15~24日にインドネシア・パプア州マノクワリ地域で臨地調査を実施,2タイプのサゴヤシ(無刺sagu makan,有刺sagu duri)ならびにクジャクヤシを伐採調査した。形態形質,収量構成要素,澱粉生産量を調査したところ,サゴヤシは髄組織からの澱粉収率は有刺タイプで高い傾向がみられた。しかし,無刺タイプ,有刺タイプいずれも,個体間で髄の乾物率や澱粉収率に大きな変異がみられ,そのことがトゲの有無を基準とする民俗変種の違いよりも澱粉生産量の差異の大きな規定要因となっていると理解された。乾物率や澱粉収率の低い個体は,地下水位の高い地区に生育していたことから,生育環境が澱粉生産性に及ぼす影響の大きさが窺われた。もう一方の澱粉生産ヤシであるクジャクヤシについて,サゴヤシに比べて樹高は高く,幹長は長いものの,幹直径が小さく,髄乾物率および澱粉収率も低く,澱粉生産量はサゴヤシには及ばないことが明らかとなった。しかし,様々な生育環境に適応したバイオマス生産の多様性を確保するためには,クジャクヤシのような未利用有用植物の資源化は大切な課題と考える。また,2010年8月3~10日に南東スラウェシ州クンダリ地域において臨地調査を実施し,4タイプの民俗変種を対象として調査を行った。それらの特徴は次の通りである。ロエ(モラット):幹が太い,澱粉収量最も高い,12年で収穫,20万ルピア/本,500~800kgのデンプン含量,幹長12m基部周囲長120cm程度,自然林の8割ほど占める。バロヴィラ:幹太めで樹高が高い。ロンガマヌ(トゥニ):トゲ有,周囲長70cm程度,17万ルピア/本。ルイ(ルリ):トゲ有,樹高8m程度,6-8年で収穫,幹長5-7m,周囲長120cm程度,50-150kgのデンプン収量,2.5~3万ルピア/本。
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