以下の主たる知見を得た。 貯木場におけるファイルキクイムシの発生消長や穿孔状況を調べた。種内系統によって、ハンノキキクイムシの外部形態に差異があることを見出した。外国産ナガキクイムシが日本のコナラ被害地に生息していることを確認した。 様々な昆虫の体内外やその生息場所、輸入木材を分離源とし、菌相を明らかにするとともに、リスク・アセスメントを行った。イチジクやトベラの衰退・枯死に関与する菌類を見出し、記載した。日本各地に侵入した北米産のプラタナスグンバイから、その世代に関わらず、豪州産菌類を分離した。キクイムシ共生菌の培養的性質や分子系統関係を調べた。各種キクイムシの共生細菌を、外国産サンプルを含めて、検出した。タマバエ類による共生菌のmycangia(菌類の貯蔵器官)への取り込み方法を、調査地で発見し、操作実験でも確認した。 ファイルキクイムシにおける発生消長の温度依存性を、人工飼育によって実証した。イチジクの乳液がアイノキクイムシの生存や随伴病原菌の生長に与える影響を明らかにした。また、イチジク株枯病感染木の材組織観察を行い、アイノキクイムシ随伴菌による通水阻害を確認した。 害虫種について、生活史特性や関連菌の生態に基づき、防除の適期および方策を示した。ナラ枯れの新しい防除法を試験し、カシノナガキクイムシの反応を見出すとともに、活用に向けた提案を行った。
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