熱帯林のエマージェント層は合板などの原料とするため伐採され失われ、劣化した二次林が広く残されている。本研究では、これまでの熱帯樹種の生理生態特性研究から得られた知見を用いて、エマージェント層樹種の補植法を開発するための基礎として、初期の成長特性とエマージェント層に達するまでの年数を推計することを研究の目的とする。 調査は、マレーシア半島部における熱帯林において、マレーシア・プトラ大学(UPM)林学部の研究者と共同で行い、すでに設置している植栽試験地およびこれを拡張して植栽試験を実施する。当年度は、先行の植栽試験区で生存率、および直径・樹高を測定した。その結果、植栽26ヶ月で5mに達した個体(Dyrea costulata)があった。Pouteria sp.(アカテツ科、R2:0.16)およびNeobalanocarpus heimii(フタバガキ科)では地際直径と樹高の間の相関が低かった。Dyrea costulata(キョウチクトウ科)およびDipterocarpus baudii(フタバガキ科)では地際直径の大きい個体ほど樹高が高い傾向が認められた。植栽後26ヶ月間の試験結果から、Pouteria sp.は樹高成長をほとんどしていないため光環境と樹高成長の関係は無く、N.heimiiは開空度15以上で樹高成長が良い個体があり、D.costulataおよびD.baudiiでは開空度20〜30%において樹高成長が良いということが明らかになった。また、新たな測定試験地の設定を行った。
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