研究概要 |
本研究は、マレーシア半島部における熱帯林において、マレーシア・プトラ大学(UPM)林学部の研究者と共同で行い、すでに設置している植栽試験地およびこれを拡張して植栽試験を実施している。 植栽当時の苗の生理生態特性評価研究の結果では、Archidendron jiringaとCallerya atropurpureaは強光阻害耐性、耐乾性が高いことから、裸地で貧栄養の立地条件である本試験地において、最も植栽に相応しい樹種であると予想されていたが、植栽5年間のA.jiringaとC.atropurpureaの苗の生存率は100%を示し、植栽5年後の平均樹高は563cmと478cmと植栽樹種の中で成長が良かった。Canarium pilosumやMorinda citrifoliaは強光阻害耐性はあるが乾燥に弱く、短い葉寿命で葉内窒素濃度が減少傾向であったことから、本試験地への植栽は適さないと予想されていたが5年間の生存率は25%と低かった。M.citrifoliaは植栽直後には比較的良い成長が見られたが、植栽1年8ヶ月~5年の間は成長が停止していた。C.pilosumでは植栽6ヶ月後から枯死が確認され、植栽5年後には全ての個体が枯死した。Cynometra caurifloraは強光阻害耐性、耐乾性が低い性質であったが、生存率は13%で試験樹種の中で最も悪い成長を示した。このよう、に、植栽5年間の成長経過は、植栽当時の苗の生理生態特性から得られていた予測とほぼ一致していたことが明らかになった。 また、樹高約20mの二次林下に郷土樹種7種(約1,000本)の植栽試験地をアイルヒタム演習林内に2009年10月に設定した。なお、本研究は今期中期計画通りに進捗しつつあり、熱帯有用樹種の植林技術向上に貢献できる成果をあげることが可能である。また、成果は各種学会やマレーシア国内において発表を行い、関連研究者や海外の行政関係者にも成果を引き渡した。
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