研究課題/領域番号 |
20405030
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研究機関 | 独立行政法人森林総合研究所 |
研究代表者 |
松本 陽介 独立行政法人森林総合研究所, 企画部・研究協力科, 科長 (50165916)
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研究分担者 |
米田 令仁 独立行政法人国際農林水産業研究センター, 林業領域, 主任研究員 (00435588)
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キーワード | 熱帯林修復 / エマージェント層 / 植栽試験 / 郷土樹種 / 樹高成長 |
研究概要 |
多くの熱帯林は、そのエマージェント層が合板などの原料のため伐採され、劣化した二次林となっている。本研究では、エマージェント層樹種の補植法を開発するための基礎として、初期の生理生態特性と成長特性からエマージェント層に達するまでの年数を推計することを研究の目的としている。マレーシア・プトラ大学(UPM)林学部と共同研究を進めている。 マレーシア国セランゴール州アイルヒュタム森林保護区内の二次林において、林冠に達した二次林樹種を伐採した後に植栽したフタバガキ科樹種Dyera costulata(Dc)、Dipterocarpus baudii(Db)、Neobalanocarpus heimii(Nh)、およびGonystylus affinis(Ga)の4樹種について、植栽4年間の成長速度、および2ヶ月後と12ヶ月後の最大光合成速度(Amax)を比較した。その結果、成長速度およびAmaxの林冠開空度の違いに伴う変化を2つのグループに類型化した。ひとつはDcおよびDbで、開空度30~40%で成長速度およびAmaxとも最大になるグループで、比較的広いギャップで良い成長をする。ふたつ目はGaおよびNhで、開空度20%かそれ以下の比較的狭いギャップ(あまり明るくない場所)で成長が良いグループである。これらの成果はJournal of Tropical Forest Science誌やマレーシアで開催された熱帯林再生に関する国際シンポジウムにおける招待講演で公表した。 樹高成長予測のためのデータ収集については、チクス植栽試験地において、植栽後約18年経過したデータを収集し、樹高成長曲線のあてはめ方法を検討し、第22回熱帯生態学会において公表した。また、平成24年3月までに気象災害のため現地に行くことが出来なかった上木の伐採幅の異なる調査地に、予算の延伸制度を活用させて頂き現地調査を実施し、ギャップサイズの違いと樹高成長速度の関係の検討のための樹高と直径成長の調査を行った。その結果、狭いギャップサイズでは上木の枝葉に上長成長が妨げられるという一時的な樹高成長の遅滞現象が生じることが明らかになりつつある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は今期中期計画通りに進捗しつつあり、熱帯有用樹種の植林技術向上に貢献できる成果をあげることが可能である。また、これらの成果はマレーシア国内で発表を行い、行政関係者等へも成果の普及を図った。
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今後の研究の推進方策 |
熱帯降雨林樹種での林冠到達年数の予測の目処は立ってきた。今後は、当所の計画には無かったが、計画を拡大して同じ熱帯林であるタイ国等に広がる熱帯季節林樹種でも同様な予測が可能かどうかの検討を、タイ国チュラロンコン大学理学部の研究者と共に進めていきたい。
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