多くの熱帯林は、そのエマージェント層が合板などの原料のため伐採され、劣化した二次林となっている。本研究では、エマージェント層樹種の補植法を開発するための基礎として、初期の生理生態特性と成長特性からエマージェント層に達するまでの年数を推計することを研究の目的とし、マレーシア・プトラ大学(UPM)林学部およびタイ国チュラロンコン大学理学部の研究者と共同で研究を進めた。 昨年度までにマレーシアの熱帯降雨林の植栽試験地で12樹種(季節林樹種1樹種を含む)、当年度はタイの熱帯季節林地域の2樹種とマングローブ1樹種のデータを集めた。これらのデータを用いてミッチャーリッヒ式による樹齢-樹高曲線を調整し、熱帯林の本来の林冠層に達する年数を推計した。 その結果、季節林や降雨林では20~40年で林冠層を形成するポテンシャルのある樹種があること、降雨林のエマージェント層でも50~60年でそれを形成するポテンシャルのある樹種があることが明らかになった。しかし、多様な生物種の住みかを提供できる多樹種による垂直的な階層構造の修復に要する年数は、最短でも季節林樹種やマングローブでは40年以上、エマージェント層を有する降雨林では130年以上の期間が必要であると考えられた。 本研究は今期中期計画通りに進捗し、熱帯有用樹種の植林技術向上に貢献できる成果をあげることができた。また、この成果は国内(日本熱帯生態学会年次大会、関東森林学会)で発表を行い、行政関係者等への普及を図った。
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