研究概要 |
タイにおいて最も深刻な2種類のウイルス性疾病にはある程度地域的な発生傾向があり,ホワイトスポット病(WSD)は東部を中心に中部・南部でまれに発生するのに対し,YHDは中部・南部で猛威を振るうが東部にはほとんど発生しないことが聞き取り調査により示された。疾病の発生時期は地域を問わずそれぞれのウイルス病に特徴があり,WSDが低温期から乾季に(2-5月),YHDが雨季の終焉から乾季(10-4月)に発生しやすい傾向にあった。室内実験の結果では,飼育水からの両ウイルス感染は起こりにくく、疾病が発生している養殖池に生息する主要な動植物ベントスにイエローヘッドウイルス(YHV)は検出されなかった。YGDによって死亡したエビ体内のYHV活性は24時間で極端に下がるという結果も得た。上記を総合的に考察した結果,タイ国内で発生している主要ウイルス疾病は地域的にある程度限定された状態で伝播し,疾病を媒介するのは飼育水や池内主要動植物以外の「何者か」すなわち東部と南部を頻繁に行き来するほど長距離を移動しないものである可能性が高いことが示唆された。 一方、タイで集約的養殖されたウシエビおよびバナメイエビに付着した薬剤耐性菌の分布実態を調査したところ、いずれにも薬剤耐性菌が検出され、多剤耐性菌もみられることが明らかとなった。水産養殖で汎用される薬剤であるオキシテトラサイクリン耐性菌の一般細菌数に対する各池の比率の範囲はバナメイエビが0.3-52.1%、ウシエビが0.008-22.3%であり、オキシテトラサイクリン耐性菌比率は養殖池間で大きく異なった。これは養殖池への投与薬剤量の差を表していると推定できる。代表的な菌株に対して抗生剤の最小発育阻害濃度を測定したところ、いずれの菌株もオキシテトラサイクリンに対して高い耐性を示し、単離されたオキシテトラサイクリン耐性菌株の約8割が多剤耐性を持っていた。
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