研究概要 |
今年度はマレーシアのボルネオ島北東部の魚市場を調査した。その結果,モヨウフグ属魚類が他の魚類と一緒に魚市場で販売されていることが明らかになった。現地調査で確認されたモヨウフグ属の種は,ケショウフグ,サザナミフグ,モヨウフグおよびワモンフグであった。いずれも全長30cmから50cmの個体で,皮を剥いて大部分の内蔵を除去した状態で販売されていた。しかし,モヨウフグの肝臓を付けたまま販売している例もあった。モヨウフグ属の筋肉や内臓には強毒がある場合が多いため,マレーシアの研究者に魚市場でフグ類を取り扱うことを禁止するように助言した。 本研究は今年度で終了するため,これまでに南シナ海で採集したフグ類の分類学的特徴と毒性分析の結果をとりまとめた。その結果,従来,Lagocephalus spadiceusと別種とされていたLagocephaluse wheeleriは同種であることが明らかになった。本種は日本国内,台湾およびベトナムで大量に利用されている。和名を学名に連動させると本種の和名はモトサバフグとなる。しかし,国内では本種をシロサバフグという和名で呼んでいた(厳格に言うとL.wheeleriがに対してシロサバフグが用いられてきた)。このため学名と和名を厳格に連動させると,国内市場に混乱が生じる恐れがあるため,多用されてきたシロサバフグを和名として用いることにした。また,インド洋西部に分布するLagocephalus guentheriはL.spadiceusに類似するが,尾鰭の特徴で識別できることが明らかになった。また,ドクサバフグLagocephalus lunarisは従来,熱帯域に生息すると言われていたが,近年,日本の高知県や宮崎県でも多数採集されていることが明らかになった。ドクサバフグはシロサバフグに類似するが,背中に分布する小棘の広がりの程度によって区別できる。
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