研究概要 |
1.北東アジア地域の北緯35~45°・東経100~115°を黄砂発生源のターゲットエリアと位置づけ,1993~2002年の10年間を対象に,春季(3~5月)におけるエリア内の砂塵嵐発生回数(DSF)と日本で観測される黄砂現象(YSP)との比較を行った。YSPはエリア内のDSFとの相関が高く,本研究で定義したエリア内の砂塵嵐が日本の黄砂現象に与える影響が大きいことが示された。DSFは7m/s以上と定義される強風の頻度と相関が高くなったが,エリア内の積雪および裸地の被覆率との間にも有意な相関が認められた。すなわち,エリア内における積雪の被覆率が大きくなるとDSFは減少し,裸地の被覆率が大きくなるとDSFは増加することが明らかとなった。 2.サルテーションの発生に対する土壌水分の影響を詳細に解明するため,鳥取砂丘内にモニタリングシステムを設置した。その結果,日積算サルテーション数は,積算風力エネルギーの増加に伴い増加する傾向を示した。しかしながら,土壌水分がサルテーションの発生を抑制する効果を持っており,体積含水率が4%より小さいときは臨界風速(サルテーションが発生し始める風速)が4m/s前後,4%以上では臨界風速が急激に大きくなることが明らかとなった。 3.中国甘粛省・張液市の荒漠草原(砂漠化指標植物が大半を占める)において気象要素,ダスト濃度,サルテーション数の観測を行い,ダストやサルテーションの発生の特徴および植生がそれらの発生に与える影響について解析を行った。その結果,20%の被覆率を持つ植生は104~500μmの範囲の土壌粒子を効率的に補足しており,臨界風速も大きくなることが明らかとなった。
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