研究概要 |
研究代表者は「トリのグリオーマso-called fowl glioma」がA型トリ白血病ウイルス(ALV-A)感染症であることを明らかにした。本疾患は1935年にヨーロッパで初めて報告され,1960年代まで欧米の地方病として散発していた。本研究課題の目的は1990年代に日本に出現したトリのグリオーマ原因ウイルス(FGV)の起原を明らかにするとともに,神経病原性を獲得したALVのゲノム多様性を解析することである。今年度得られた成績は以下の通りである。1.昨年に引き続き九州地方の鶏群について調査した。九州地方の一地域には肥後チャボをはじめ古くから維持されている日本鶏が存在する。そこで,この地方の日本鶏計115羽のFGV感染率をFGV特異的nested PCRで検索した。その結果,33羽がPCR陽性となった。病理組織学的には陽性鶏20羽中17羽の脳に上衣肉芽,囲管性リンパ球浸潤が,4羽にグリオーマが認められた。これらの陽性鶏5羽から分離されたALVはシークエンス解析の結果FGV近縁株であることがわかった。2.名古屋の研究施設で系統維持されている鶏17系統,計49羽の羽髄を材料にFGV特異的nested PCRで検索したところ,いずれの鶏からもFGVは検出されなかった。3.ドイツの在来鶏10羽を剖検した。いずれの臓器にも肉眼的には特に異常は認められなかった。中枢神経系を病理組織学的に検索した結果,2羽に囲管性リンパ球浸潤が認められたが、トリのグリオーマの特徴病変は見出されなかった。
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