研究課題
本年度は、ウイルス様粒子(VLP)を用いた蚊媒介性フラビウイルス感染症の新規検査法の確立を目指した。フラビウイルス感染症の診断には、IgGやIgM捕捉するELISA法や蛍光抗体法等様々な試験法が適用されている。しかし、フラビウイルスの多くの試験法では交差反応性が強く、フラビウイルス間の感染鑑別は一般的に困難であるとされている。これまで開発されたフラビウイルス間の鑑別試験の中では、ウイルス中和試験法の有効性が示されているが、生ウイルスを使用するため常に感染の危険性を伴う。そこで本研究では、安全で特異性の高いフラビウイルス感染症の感染鑑別診断法として「VLP中和試験法」の有効性について検討した。VLPはウイルスのエンベロープで形成される殻の中に、ウイルスの構造蛋白質遺伝子領域を欠損させた自己複製可能なウイルスゲノムRNA(レプリコン、Rep)を内包する粒子構造体である。VLPの感染により、粒子の形成に必要なウイルスの構造蛋白質は産生されない。したがって、VLPは一度のみ細胞に感染するが次世帯の感染性粒子の産生は認められないため、比較的安全に取り扱うことが出来る。そこで、今回フラビウイルスに属する日本脳炎ウイルス(JEV)とウエストナイルウイルス(WNV)のVLPを作製し、両ウイルスに対するVLP中和試験法を開発した。また、Repにレポーター遺伝子として赤色蛍光蛋白質を導入することで試験判定の効率化を図った。更に、各種動物における両ウイルスの感染血清を用いてJEVとWNVの感染鑑別を行ったところ、両ウイルスの感染を効果的に鑑別することが出来た。これらの結果より、今回確立した「VLP中和試験法」は、安全で特異性の高いフラビウイルス感染鑑別法として使用できるものと考えられた。
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Am.J.Trop.Med.Hyg (印刷中)
Virus Res. 144
ページ: 35-43
北獣会誌 53
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