研究課題
これまでの本研究課題では「蚊媒介性フラビウイルス感染症」を対象として、安全で効果的な検査法の開発(1)と中国・広東省での当該感染症の疫学的解析(2)を行っている。本年度は以下に示す成果を得た。1. フラビウイルスのウイルス様粒子作製法の改良法の開発:各種のフラビウイルス感染症の鑑別検査法の標準法は生ウイルスを用いた中和試験法である。しかし、本法では生ウイルスを使用するため危険性を伴う。そこで、これまでの私の研究では、より安全なウイルス様粒子(VLP)中和試験法を開発した。本年度はVLP中和試験法に使用するVLPの簡易作製法を開発した。通常のVLP作製法では、ウイルスのレプリコンをin vitroで転写し、これを構造蛋白質発現ベクターと細胞に共発現する2つのステップでVLPを得る。しかし、簡易法では予めレプリコン持続複製細胞を樹立し、本細胞に構造蛋白質発現ベクターを導入する1つのステップでVLPが得られるため、非常に簡便である。本法によって得られるVLP量は通常法と同等であり、本法はVLP作製法として有用であると考えられる。2. 中国・広東省で発生したデング熱の分子遺伝学的解析:本年度、中国・広東省で発生したデング熱の患者よりデングウイルスの血清型1型(DENV1)および3型(DENV3)が分離された。これらウイルスのE蛋白質の遺伝子配列を決定し、広東省や中国国内の他省、あるいは海外各国から報告されているデングウイルスについて系統解析を行った。その結果、本年度流行したデング熱の原因DENV1の由来は様々であると考えられた。また、本年度分離されたDENV3は、近年United StatesやVenezuela流行しているものに近縁であることが明らかとなった。
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J.Vet.Med.Sci.
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