研究概要 |
本研究の目的は、ケニア・タンザニアおよびザンビアにおけるツェツェバエ分布状況及びトリパノソーマ感染状況を調査することである。H21年度に調査したザンビアに北部および西部では1,000匹以上のツェツェバエが捕獲できた。形態的特徴から同地域でのツェツェバエ優勢種はGlossina morsitansとG.pallidipesであることが明らかとなった。これらのツェツェバエサンプルから市販のDNA抽出キットを用いてトータルDNAを抽出しツェツェバエが吸血した動物種をシトクロームbユニバーサルPCR増幅産物のシークエンス解析、トリパノソーマ感染状況を種・亜種特異的PCR法およびLAMP法によって検査した。ツェツェバエが吸血した動物種については採取地帯が野生動物保護区の周辺であったことから、ウシ・ヤギなどの家畜に加えてアフリカゾウ・キリン・イボイノシシなど多種多様な野生動物由来シトクロームb遺伝子が検出された。一方、遺伝子検出レベルでのトリパノソーマ感染状況調査を実施した結果、最も感染率が高かったのはT.vivaxの40%以上、次いでT.congolense, T.bruceiであった。加えて5%以下の少数ではあったが、これら3種類のトリパノソーマが混合感染している例も散見された。ザンビア北部で採取したツェツェバエからはヒト急性アフリカトリパノソーマ症の原因となるT.b.rhodesienseが検査した500匹のツェツェバエ中16匹から検出された。同地区では時折ヒト急性アフリカトリパノソーマ症の患者が報告されていたことから、本調査により、感染流行が現在も続いていることが明らかとなった。
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