研究課題
本研究の目的はカビ毒高濃度汚染地域であるタイにおいて、カビ毒を代謝し解毒する微生物や動物組織を探索することによって、カビ毒分解能をもつ酵素資源を見出すことにある。この目的を達成するために、平成21年度は,前年度にタイのカセサート大学の研究スタッフと共同で収集したカッサバ栽培農地を中心とした土壌から分離した細菌のカビ毒代謝活性を調べた。カビ毒としてアフラトキシン(AF)、オクラトキシンA(OA)、ゼアラレノン(ZEA)を各試料に添加し、35℃下で一晩培養した後に培養物を酢酸エチルで抽出し、抽出物をTLCまたはHPLCで分析することによって、また、必要に応じて質量分析も合わせ行うとともに放射能標識カビ毒を用いた代謝実験を行うことによって代謝物を検索した。その結果、一部の菌によってAFB1がアフラトキシコール等に代謝変換されることが認められた。それら研究と並行して、タイ中央部において飼育されているウマ・ヒツジ・ブタの糞便および糞便に由来する嫌気性菌による上記カビ毒の代謝も合わせ調べたが、際立った代謝変換は認められなかった。さらに、ブタやニワトリ等の家畜ならびにマウス等の実験動物の肝臓組織によるAFB2からAFB1への代謝変換を検討したところ、動物種差は認められるものの明確な変換が認められた。次年度以降は、カビ毒代謝能を持つ土壌由来微生物の取得、動物肝臓AFB2-AFB1変換酵素の性質の解明をめざす。
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