研究概要 |
カリブ地域で摂取されている果実特異的に存在するアルカロイドをはじめとするP糖タンパク質(P-gp)の基質となる物質を同定し、その中で神経毒性の強い物質をP-gp欠損マウスに投与し、P-gp機能欠損(低下)により当該神経毒の脳への蓄積を検討する。このようにして各地域のパーキンソニズムに最適化されたモデルマウスを用いて、我々が所有している神経保護物質1-methyl-1,2,3,4-tetrahydroisoquinoline(1MeTIQ)誘導体を始めとする化合物ライブラリーの再評価を行うことが本研究の目的である。天然物化学の手法を用いて、カリブ地域で摂取されている果実トゲバンレイシ(量が採れなかったので実際には沖縄産の同種果実の葉部を使用)中に含まれる物質の同定を行った。新規TIQ誘導体として(R)-N-methylnornuciferine及び既知TIQ誘導体として(S)-norcorydine、(R)-anonaine、(S)-0,0-dimethylcoclaurine、(S)-4'-0-methylcoclaurine等の構造を決定した。TIQ誘導体の一部はP糖タンパク質(P-gp)の基質となることが示唆された。これらのうち、構造的に脂溶性が高く、血液脳関門を通過し脳内に蓄積する可能性の高い0,0-dimethylcoclaurine(DMC)に注目し、この化合物のラセミ体を合成して毒性検討に用いた。培養細胞レベルでは、SH-SY5Y神経芽細胞腫において細胞死を引き起こし、小胞体ストレス誘導作用を有していることを明らかにした。現在、P-gp欠損マウスに投与し、P-gp機能欠損による脳への蓄積を検討しつつある。
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