研究概要 |
赤痢アメーバ症は発展途上国における小児下痢症の主要原因であり、世界中の感染者人口はおよそ5000万人、同症で毎年10万人の命が失われている。効果的な対策には、赤痢アメーバの感染成立のメカニズムならびに同原虫に対する感染防御機構の理解が不可欠である。我々は赤痢アメーバ症が蔓延している南アジアにおいて、国際的な共同研究を展開し、感染の成立から赤痢アメーバ症の発症・重症化までを規定する宿主因子ならびに病原体の病原性因子の同定を目指している。前述の目的を達成するため、バングラデシュ国際下痢症研究センター(ICDDR,B.)のRashidul Haque博士、Mondal Dinesh博士、ヴァージニア大学のWilliam A.Petri Jr.博士と綿密な打ち合わせを重ね、調査地であるバングラデシュはダッカのスラム街ミルプールにおいて、既存の400名のコホート集団に加えて、新たにコホート研究対象となった400人余りの新生児に関して追跡調査を行い、10年前に同地域で行われた研究に比べて赤痢アメーバの罹患率が低下していることを明らかにした。また出生半年後の乳児から末梢血単核球と血清を回収し、末梢血単核球の赤痢アメーバに対する自然免疫応答を測定(上清中の炎症性サイトカインの量をCytokine Bio-Plexで測定)すると共に、赤痢アメーバのレクチン特異的移行抗体の推移を測定した。次年度以降は、これらデータの詳しい解析に着手すると共に、さらなるコホート研究を継続する予定である。
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