熱帯熱マラリア原虫の感染赤血球は未感染の正常赤血球とロゼット形成を起こし、病原性を高める。一方、三日熱マラリア原虫もロゼット形成を起こし、病原性との関連が予想されるが、詳細はあきらかでない。我々は最近、熱帯熱マラリア原虫と三日熱マラリア原虫の感染赤血球表面に発現しているSURFIN/PvSTPという新規リガンド候補分子を同定した。本研究では流行地の三日熱マラリア原虫集団を用いてPvSTP(PvSTP1とPvSTP2)に対する選択圧を分子生物学的・集団遺伝学的に明らかにすることを目的とした。本年度は、マラリア流行地から三日熱マラリア原虫を採集し、採集した三日熱マラリア原虫から間接蛍光抗体法(IFA)用のスメア、DNA、RNAを調製した。PvSTPの組換えタンパク質を作成し、局在解析などに使用する抗血清を得ることができた。この血清を用いてウエスタン解析を行ったところ、2つのバンドを検出することができたが、これらのバンドは予想サイズよりもかなり小さいため、断片化された産物の可能性がある。また、間接蛍光抗体法により原虫の細胞質、寄生胞膜、感染赤血球細胞質もしくは赤血球表面に反応が見られた。RNAからのRT-PCRによりPvSTP1とPvSTP2が共に転写されていることを確認した。DNAから60余のPvSTP1の遺伝子配列を決定し集団遺伝学的解析を加えた。その結果、PvSTP1には正の淘汰圧がかかっていることを検出することができた。
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