研究課題/領域番号 |
20406014
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研究機関 | 旭川医科大学 |
研究代表者 |
吉田 貴彦 旭川医科大学, 医学部, 教授 (90200998)
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研究分担者 |
山内 博 北里大学, 医療衛生学部, 教授 (90081661)
角 大悟 筑波大学, 人間総合科学研究科, 講師 (30400683)
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キーワード | 砒素 / 排泄促進 / 解毒 / 無毒化 / 改善予防 |
研究概要 |
旭川近郊農家から入手したブロッコリー6株(地上部分の全体)を洗浄後、通常の食用に供される花芽、花芽直下の茎部、根に近い茎部、葉柄部および葉に分け、市販スプラウトを対照としてsulforaphane含有量を測定した。含有量はスプラウトに対して成熟株では、花芽および茎部では5分の1量であった。花芽直下の茎は2分の1量と比較的多かったが、葉柄部および葉部は100分の1量と極めて低かった。種子の栽培から収穫時の作物の体積・重量を考慮すると、機能性を期待して摂取する加工品を製作する原料として、通常利用されない茎部を用いることの有用性が確認された。茎部は花芽から離れるほど硬いため検体から茎部の外表を除いたが、それでも食用とするには硬いと思われ、今回のように凍結乾燥粉末化したものを製品とする優位性がある。 スプラウトはsulforaphane含有量が最も高く飼料調整しやすいので、実験動物への投与実験にはスプラウトを用いた。ブロッコリースプラウト市販品(村上農園、スーパースプラウト)を凍結乾燥後粉末化処理し、これを混入した固形飼料を作成した。スプラウト粉末含有量は、ハムスター(100g)の1日飼料摂取量を10gとして、人(60kg)が1日に1パック(30g湿重量、3g乾燥重量)摂取することを目安に、10倍摂取量となるように5%とした(sulforaphaneとして2.4mg/kg/dayの摂取量)。まずハムスターに飲水を介して砒素(0.5mg/day)を10週間曝露し(この間は通常固形飼料を投与)、その後砒素曝露を継続しつつスプラウト添加固形飼料を自由摂取させ50日間飼育した。実験動物は代謝ケージで個別に飼育し、経時的に尿を採取した。スプラウト摂取により尿中への砒素排泄量が増加し、メチル化された砒素代謝物の比率が高まることが確認された。一方、スプラウト摂取により血中酸化ストレス度(d-ROM値)と尿中8-OHdG濃度の上昇が観察され、活性酸素産生量増加とそれに伴う酸化的ストレスの亢進が示唆された。スプラウト中sulforaphaneの摂取は、砒素の解毒と体外への排泄を促進させる一方で、砒素の毒性のうち低下が見込まれた活性酸素の誘導および酸化的ストレスがさらに亢進したことは熟慮を要する。粉体化で消化管からの吸収効率が高まり、sulfomphaneの負の生体影響が現れた可能性が考えられた。今後、スプラウトの摂取率を下げ、解毒・排泄の亢進が見られつつ、負の影響のない摂取量を検討する必要がある。
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