研究概要 |
前年度までと同様,2009年9月と2010年2月に食事調査,生体計測,マラリア検査,尿検査,聞き取りを含む現地調査を実施した。2008年度に見られた朝食の劇的変化は一過性の流行だったようで,2009年度には朝食を紅茶とビスケットで済ませる人は減った。しかし,その人たちは,再び前夜の残りのイモ類やスープを温め直して食べるという伝統的な朝食に戻ったわけでは必ずしもなく,米を炊いて食べる例もみられたし,若者の中には朝食をとらない例もかなり見られた。食生活については多様化が進んでいるといえそうである。 健診の結果からは,2009年9月時点ではマラリア感染者数の減少傾向が継続していた一方で,毎日蚊帳を使う人が住民の約半数に減っていたこと(前年度は70%を超える人が毎日蚊帳を使っていた)と2010年2月時点ではマラリア感染者数がやや増加したことが最大の変化であった。蚊帳使用が減ったのは,蚊が減ったので必要ないからと語る人もいたが,多くの場合は蚊帳が破損して新しいものを入手できていないという理由であった。しかし,2010年5月から6月にかけて,殺虫剤を練り込んだ樹脂で作られ殺虫成分が徐放される蚊帳が島全域で無償配布されることになっていたので,2010年度に再びマラリア感染者数が低下するかが興味深いところである。生体計測と血圧測定からは,それほど顕著な変化はみられなかった。尿検査から推定された塩分摂取は,子供で大きなばらつきがみられ,日本や中国並みに多量の塩分をとっていると推定される子供もいたが,成人の塩分摂取は先進国ほど高くなく,加齢に伴う血圧上昇の傾きも先進国ほど急でなかった。食生活は比較的大きく変化しているが健康状態はそれほど変化していないのがタイムラグなのかどうか,引き続き調査が必要である。
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