研究概要 |
前年度までと同様,2010年9月と2011年2月に食事調査,生体計測,マラリア検査,尿検査,聞き取りを含む現地調査を実施した。食事内容は引き続き購入食品の摂取が増加傾向にあったが,2008年のビスケットのような流行はなかった。2009年度までとは異なり,男性のBMIがやや増加傾向にあるようにみえたが,真の増加傾向なのか偶然変動の範囲内かは不明である。マラリア感染割合は2009年度末からほぼ横ばいであった。本来は2010年9月以前に殺虫剤を練り込んだ樹脂で作られ殺虫成分が徐放される蚊帳が無償配布されることになっていたが,計画通りの配布がなされなかったため,村人の蚊帳利用状況はほとんど変化しなかったためであろう。血圧測定からは,140/90mmHgを超える高血圧の人が男女とも若干増える傾向にあり,また血圧は年齢とも尿中Na/K比とも正の相関関係にあったので,やや高い塩分摂取が続くことによって高血圧になるケースの存在が示唆され,本研究の作業仮説である,生活の急速な再近代化にともなう健康状態の変化の兆候が現れた可能性がある。尿中Na/K比は2009年度までは子供だけに大きなばらつきがあったが,2010年度は成人でも日本や中国並みに多量の塩分をとっている人が見られた。この傾向は,ホニアラへ行ってFish&Chipsを摂取する頻度が上昇したことと関連していると考えられた。研究最終年度にあたり,2011年2月には,首都ホニアラ市で,研究者,政府保健医療関係者,海外援助機関関係者,住民を集めた研究成果発表ワークショップを実施し,知見を共有でき,参加者からも有意義であったとの評価を得た。
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