研究概要 |
食生活の変遷の健康への影響の解析により、人々の健康の維持増進に資することを目的として、インドネシア共和国パプア州住民の健康・栄養調査を行ってきて、根菜主体の伝統的食生活形態が強く残る山間部地域のニューギニア高地民族とこれらの地域から州都ジャヤプラ近郊への都会移住者の比較、更にインドネシアの他の食文化形態の異なる地域(バリ島)の住民との比較等を行い、食生活の変遷の健康への興味深い影響が抽出されつつある。そこでこれらの傾向を更に詳しい解析のために、本年度の調査は更に進めて、2010年8月パプア州で都市近郊の移住民の中でも民族を限定しダニ族・ラニ族を対象に調査を実施した。調査は昨年に引き続き、現地カウンターパートのチェンデラワシ大学医学部長パウリーナ教授を中心に、同大学医師、医学生らの協力を得て1週間17地域の778人の調査を行った。その結果、山間部住民と比べて、血圧に差は見られなかったものの、肥満及びメタボリックシンドローム関連指標は全て、都市部住民で高値を示し、食生活パターン解析結果では脂質及びタンパク質の摂取エネルギー比率が山間部住民に比べて有意に増加していることがわかった。又、2011年3月、かつて低栄養で心疾患の発症率が高いとされたバリ州チェニンガン島住民73人の健康・栄養調査を現地ウダヤナ大学医学部長スアスティカ教授のグループと共に実施した結果、漁労中心の同島住民に低栄養傾向は見られず、BMI及び体脂肪率はバリ島の他地域住民よりもむしろ高い傾向(BMI>25、男性14%、女性34%)が観察された。以上、伝統的食生活パターンの違いを越えて、欧米化食生活への急激な転換と肥満やメタボリックシンドローム発症リスクの強い関連性が示された。これらの結果はProceedings of Surabaya Metabolic Syndrome Update the 7th, 243-246(2011)及び、J.Clin.Gerontology & Geriatrics(2011,in press)に投稿、又、2011年5月、第65回日本栄養・食糧学会(東京)、及び2011年10月、インドネシア、アイルランガ大学糖尿病栄養センターにおける肥満と糖尿病アップデートシンポジウムSDU-XXI and SOBU-3にて報告の予定である
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