研究概要 |
本研究の目的は日本人の糸球体濾過量(GFR)推算式が広くアジア人種に適応可能かを検証し、さらにGFR推算式活用の前提となるクレアチニン(Cr)検査の標準化をはかり、アジア各国のCKD疫学調査を支援することである。 慢性腎臓病(CKD)対策は、世界中で増加し続ける末期腎不全患者対策として喫緊の課題であり、腎機能低下に関連して危険度が高まる心血管疾患や死亡の対策としても重要である。腎機能の評価法として、国際的に血清クレアチニン値にもとづいたGFR推算式を用いることが推奨されており、現在では唯一MDRD式が一般に用いられている。日本腎臓学会では新たに日本人に適したGFR推算式を作成したが、これがアジア系人種に広く適応可能かについては未解明であった。またGFR推算式の前提となるCr検査は、その測定方法やキャリブレーションが各国で異なりる。血清クレアチニン検査の標準化が必須である。 平成20年度の研究成果として、アジア各国の代表との協議を2回行い、プロトコールなどを決定した。参加者は平成18年度より共同研究を行っている韓国台湾も加え以下の通りである。Prof. Ho Yung Lee, Dr. Beom Seok Kim (Yonsei Univ., Seoul), Prof. Hung-Chun Chen (Kaohsiung Medical Univ., Kaohsiung), Prof. Zaki Morad (International Medical University, Kuala Lumpur), Prof. Kriang Tungsanga (Chulalongkorn Univ., Bangkok), Dr. Chagriya Kitiyakara (Mahidol Univ., Bangkok), Prof. Tak Mao Chan (The Univ. Hong Kong, Hong Kong), Prof. Philip Kam-Tao Li (Chinese University of Hong Kong, Hong Kong), Dr. Teo Boon Wee Jimmy (National Univ. of Singapore, Singapore)。イヌリンクリアランスを各国で実施するための申請中であり、受理されれば速やかに開始予定である。またCr標準化をアジア各国で進めるため、参加各施設における定法、キャリブレーション方法を調査中である。結果に応じてCr測定用標準血清サンプルセットを作成し、参加各施設での測定を行う予定である。
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