研究概要 |
本研究の目的は日本人の糸球体濾過量(GFR)推算式が広くアジア人種に適応可能かを検証し、さらにGFR推算式活用の前提となるクレアチニン(Cr)検査の標準化をはかり、アジア各国のCKD疫学調査を支援することである。 慢性腎臓病(CKD)対策は、世界中で増加し続ける末期腎不全患者対策として喫緊の課題であり、腎機能低下に関連して危険度が高まる心血管疾患や死亡の対策としても重要である。腎機能の評価法として、国際的に血清クレアチニン値にもとづいたGFR推算式を用いることが推奨されており、国際的にはMDRD式が一般に用いられるが、日本人には適していないことが明らかとなった。そこで日本腎臓学会は新たに日本人のGFR推算式を作成したが、これがアジア系人種に広く適応可能かについて検証を要する。またGFR推算式の前提となるCr検査は、測定方法やキャリブレーションが各国で異なり、その標準化が必須である。GFR推算式、Cr標準化は、今後アジアのCKD疫学調査を行うための基盤となる。 平成21年度の研究成果として、アジア各国の代表との協議を2回行い、参加者を募った。日本人のGFR推算式の検証はProf.Kriang Tungsanga(Chulalongkorn Univ., Bangkok)とタイ人70例のイヌリンクリアランスを実施予定であり、タイ当局への医師主導型治験を申請中である。Cr標準化は国際標準血清(検査医学標準物質機構)に加え、日本臨床衛生検査技師会より標準血清を購入し、アジア各国に冷凍輸送し、通常通りの測定法で2日連続、各5回の測定をし、結果を日本に報告してもらう。参加予定国と代表者は以下の通りである。韓国:Prof.Ho YungLee (Yonsei Univ.), Prof.Yo Sung Kim (Seould National Univ.),台湾:Prof.Hung-Chun Chen(Kaohsiung Medical Univ.),マレーシア:Prof.Zaki Morad (International Medical Univ.),タイ:Prof.Kriang Tungsanga (Chulalongkorn Univ.),香港:Prof.Philip Kam-Tao Li (Chinese Univ.of Hong Kong),シンガポール:Dr.Teo Boon Wee Jimmy (National Univ. of Singapore)。加えて中国、インド、フィリピン、オーストラリアなどのアジア・太平洋各国より参加希望があり、来年度における拡充を検討する。
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