研究概要 |
(1) マラリア流行地域におけるグルコース6ーリン酸脱水酵素(glucose 6-phosphate dehydrogenase)欠損症を,日本人により開発された迅速・簡便な方法で検出し,その変異者の比率を国・地域・民族別に比較する。(2) その変異部位を遺伝子レベルで解明することにより,民族の起源考証に役立つ資料を提供する。以上2つを目的として研究を継続した シエラレオネ(西アフリカ)に研究協力者を派遣して,マラリア患者のサンプルを収集した。マラリアの検査と同時に,貧血の検査(Hbの測定)およびG6PDの検査を行なった。アフリカにはG6PDA-と呼ばれるごく弱い活性低下症が男性人口の20-40%程度存在する。その活性は健常人の60-80%程度であるといわれ,日常生活への支障はほとんどない。プリマキンの内服による影響については成績がないが,今後の課題と思われる。今年度の調査では,この軽度の活性低下群は無私して検査を勧めた。 フィリピンでのG6PDの分子遺伝学的調査は今回が初めてである。ボホール島の小学校に協力をしてもらい男子児童281名のサンプルを得た。このうちG6PDの活性低下を示したのは10名(3.6%)であった。G6PD遺伝子を読むと,Viangchan型(871G>A,1311C>T,IVS11 nt93T>C)が優位で,Vnua Lava型(383T>C)がそれに続いた。 パプアニューギニアの研究者と連絡がつき,調査を計画したが実現できず,G6PD検査試薬だけを送付し実施してもらった。欠損者率,遺伝子読み取り等は来年度に明らかにしたい。
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