研究概要 |
(1) マラリア流行地域におけるグルコース6リン酸脱水酵素(glucose 6 phosphate dehydrogenase)欠損症を、日本人により開発された迅速・簡便な方法で検出し、その変異者の比率を国・地域・民族別に比較する。(2)その変異部位を遺伝子レベルで解明することにより、民族の起源考証に役立つ資料を提供する。以上2つを目的として研究を継続した。 フィリピン共和国レイテ島に渡ってG6PD欠損症の調査を実施した。男性由来の315検体について活性検査を実施し、7検体(2.2%)がG6PD欠損と判定された。これらG6PD欠損者の血液からDNA抽出を行ない、G6PD遺伝子を読み取ったところ、6検体はViangchan型(871G>A,1311C>T,IVS11 nt 93T>C)であり、残り1検体はCoimbra型(592C>T)であった。 パプアニューギニアの研究者と連絡がつき、予備調査を実施した。この国はオーストラリアとの関係が深く、マラリアに限らず各種感染症の調査・研究はオーストラリア研究者との関係を無視しては実施できない状況であることを確認した。その認識のもと、オーストラリア側に優位性のある分野と日本側に技術的優位性のある分野にそれぞれ割り振りをおこない、3者で共同に研究を進めることになった。すなわちマラリアの調査・治療研究をオーストラリア主導で、G6PD変異の検索については日本側主導で研究をすすめることとした。具体的な成績は来年度以降に出ることとなる。 マラリア流行地出身の女性で日本人と結婚し、出産した子供にG6PD欠損症が出たという症例のコンサルテーションを3年間に数例受けた。欠損者本人とその母親の血液を検査したところ、母親はその出身地に頻度の高いG6PD遺伝子変異型をもっていることを確かめることができた。
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