研究概要 |
中国広東省広州市にある広州胸科医院を訪問し結核の診療状況について調査を行った。昨年度の調査で、中山大学医学部附属第三医院呼吸器内科は結核病棟を有さず、結核性胸膜炎などの非排菌例の診療は行うが、塗沫陽性結核患者は広州胸科医院へ紹介されることが分かったため、本年度は広州胸科医院のみの調査とした。2009年度の結核の診療規模は、疑い症例も含めると、年間外来患者数は約210,000人、入院患者数は7,300人であった。広東省の2009度における統計では、塗沫陽性結核の罹患者数は12,303人であり、65歳以上では塗沫陽性結核の罹患者数が1,455人(11.8%)であった。また、広東省における多剤耐性結核(MDR-TB)[超多剤耐性結核(XDR-TB)を含む]は、2005年の統計で6.3%(初回治療5.3%、再治療15.7%)であり、今回の調査では、2009年度に広州胸科医院に入院した患者の中で、MDR-TB患者が再治療例を含めて224人(9.11%)(XDR-TBを除く)、XDR-TB患者が21人(0.85%)であることが明らかとなった。その中から、MDR-TB 50株、XDR-TB 5株についてDNAを抽出し、PCRにて塑rpo B、kat G、inh A、 ahpC遺伝子を増幅し、その塩塾配列の解析を進めているところである。現時点で、rpoBの96%に変異がみられ、従来から報告の多いcodon 526、531に加えて、codon 514、516、533、541に変異が検出された。一方、katGでは68%に変異がみられ、その多くがcodon 315の点変異(AGC→ACC)であったが、一部にcodon 280の点変異(AGC→AAC)や、第839塩基でシトシンの欠失、842塩基と843塩基の間でアデニンの挿入が検出された症例もみられた。併せて、患者の宿主要因について調べるために、結核菌抗原に対する応答性についてQuantiFERON TB-2Gによる解析を進めているところである。
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