研究概要 |
中国広東省広州市の広州胸科医院における多剤耐性結核の状況について調査を実施した。一昨年度の調査で、広州胸科医院が広東省における結核診療の中心的病院であることがわかったため、本年度も広州胸科医院のみの調査とした。今回の調査では、2010年度に広州胸科医院に入院した患者で薬剤感受性検査を実施した1,752人中で、MDR-TB患者は再治療例を含めて237人(13.5%)(XDR-TBを除く)、XDR-TB患者が6人(0.34%)であることが明らかとなった。これらの頻度は、調査を開始した2008年度および2009年度と比べ明らかな増加傾向はみられなかった。その中から、MDR-TB50株、XDR-TB5株についてDNAを抽出し、PCRにてrpo B、kat G、inh A遺伝子を増幅し、その塩基配列の解析を行った。解析した薬剤耐性株55株の中で、rpoB、katG、inhAに変異のみられた株がそれぞれ90%、63%、22%に認められ、これまでの報告と同様であった。rpoB、katG、inhA、に変異がみられた菌株の中では、それぞれ92%、91%、100%がいわゆるホットスポットの変異であった。一方で、これまでにあまり報告のみられない部位にも変異が検出され、広州胸科医院あるいは広州市に特異な何らかの要因が関係している可能性も推察されたが、今後さらに解析を重ねる必要があると考えられた。併せて、患者の宿主要因を調べるために、BMI、血清アルブミン値、白血球数、T細胞比率、CD4/CD8比、NK細胞比率、QuantiFERON TB-2Gキットを用いた結核菌抗原に対する末梢血リンパ球の応答性について、感受性結核群とMDR-TB/XDR-TB群間で比較検討を行ったところ、症例数が少ないものの両群間に有意な差は検出できなかった。また、2011年1月28日、29日には、中国から3人の共同研究者を仙台に招き、第2回日本・中国多剤耐性結核フォーラムを開催し、本研究で得られた研究成果とともに、日本と中国における多剤耐性結核診療の現状について講演を実施するとともに、相互に情報交換を行った。
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