研究概要 |
平成22年度も,平成21年度に引き続き,電子指紋符号の研究および敵対者がいる状況での秘密分散法の研究,を行った.これらは,ともに情報理論的に安全性が規定され,一様乱数を用いた確率的な符号化を行う.以下に両者の具体的な内容を述べる. 電子指紋符号は,インターネットを通じて配布される動画などの有償コンテンツの不正コピー(海賊版)の流通を防ぐための技術である.電子指紋符号の枠組みでは,コンテンツの中には,ユーザのID情報が符号化して埋め込まれる.悪意のあるユーザは,複数人で結託してコンテンツを不正に操作し,自分たちが特定されないことを目指して不正にコンテンツを生成する.本研究では,有限射影平面に基づく電子指紋符号を構成することにより,すべての結託ユーザを特定できる十分条件を与えることに成功した.本論文の成果は論文誌にすでに発表済である.本研究では,得られた十分条件の必要性についても議論し,国内外の会議において口頭発表を行った. 秘密分散法は,1つの情報をシェアと呼ばれる複数の情報に符号化し,秘密情報の安全性を高める技術である.本研究では特に,秘密情報が,無記憶性などの仮定のない一般的な情報源から出力される状況を考え,シェアの数が2で,(A)2個のシェアから秘密情報が1に近い確率で復元できる,(B)任意の1個のシェアからは秘密情報がほとんど洩れない,という2つの制約のもとでの符号化・復号化を考察した.本研究では符号化に必要なシェアのサイズ,一様乱数のサイズ,敵対者の攻撃の成功確率についての符号化定理を導出した.得られた符号化定理は新しい情報源のクラスを示唆しており,この新しい情報源クラスに関する結果も国内の研究会ですでに行った.
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