研究概要 |
計算論的学習理論は,人工知能の実現において最も重要な研究分野の一つである機械学習の可能性を,数理的で厳密に解析を行う研究パラダイムである.このような研究の対象として形式言語を選択し,その部分クラスの中で実用上重要な決定性文脈自由言語を受理する決定性プッシュダウンオートマトン(DPDA),またはそれに対応した文法等について,その構造に妥当な制約を課した部分クラスを幾つか対象として選び,計算論的な手法によって学習アルゴリズムを開発し,その応用を図ることを目的として研究を行った.本年度は以下の研究成果を得た. 1. 学習アルゴリズムの開発の基礎構築 昨年度,DPDAに出力機構を付与した決定性プッシュダウン変換器(DPDT)の部分クラスのうち,ε動作をある程度許した空スタック受理式の決定性限定1カウンタ変換器(DROCT)に対する多項式時間の等価性判定アルゴリズムを研究成果として得たが,受理方式を最終状態受理式とする実時間のDROCTに対してもその等価性判定が多項式時間で行えることを証明した.この成果は対象とするDPDTに対する質問による学習に利用できる. 2. 学習アルゴリズムの開発 一般化順序機械を含む有限状態変換器(FST)の部分クラスのうち,strict prefix deterministic FSTと呼ぶクラスに対しては,正例からの学習(極限同定)が多項式時間で行えることを証明した. 3. 学習アルゴリズムの応用 ジュウシマツという鳥の歌文法の構造を,k可逆言語と呼ばれる正則言語の部分クラスに対する極限同定アルゴリズムを利用して解析を行う手法を提案してきているが,これを改良してその自動化を行った.また,量子セルオートマトンを用いて画像圧縮を行う手法を提案した.
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