双方向に作用しあう計算プロセスからなるシステムのモデルである「相互作用の幾何」は、高階関数・高階プログラムの解釈に必要な構造(モノイダル閉圏の構造)を加えることにより、計算資源の非線型な利用を明快に表現できる、より豊かな数学構造を自然に持つようになることが、研究代表者の最近の研究によって明らかになってきた。本研究は、この最近の発見を出発点として、高階関数と巡回・再帰構造の有機的な組み合わせを中核にした、「高階相互作用の幾何」の理論を提唱し、その数学的な基礎とプログラミング言語理論における応用を与えることを目指すものである。本年度の主要な研究実績は以下のとおりである。 (1) 集合と二項関係のなす圏において、量子二重化によりリボンホップ代数を構成し、そのモジュールの圏として得られる交差G集合のリボン圏について調べた。このリボン圏が再帰プログラムの意味論と結び目の不変量の理論の双方の非自明な場合になっていること、またブレイド付きの線形論理の証明論のモデルの構造を持っていることを示した。これらの成果を、国際会議およびその予稿集で発表した。 (2) トレース付きモノイダル圏における量子二重化を、Int構成を用いて簡潔に表現した。この結果を(1)の成果とあわせて論文にまとめ、学術誌に投稿した。 (3) プログラム意味論と結び目の不変量の関係に関する考察をまとめ、招待講演(日本数学会秋季総合分科会特別講演)およびそのアブストラクトとして発表した。
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