研究概要 |
研究目的である図形の充填ソルバーであるMulti-sphere Schemeの開発を進め,本年度の研究実施計画に従って,幾何的データ構造として座標によるソートとバケット分割を利用した方法の実装し,計算速度の大幅な高速化に成功した.バケット分割を利用した球集合内で衝突している球の組の検出を行うアルゴリズムは,球の大きさの違いが定数比で抑えられている場合には,計算時間が0(nlog n+K)であることを証明することができた.ここで,nは球の個数,Kは衝突している球の組の数である.この計算オーダーは理論的に最適であり,実装した性能も高く,図形充填ソルバーの全体の計算性能に大きく寄与している.図形充填ソルバーの応用としてラベル配置問題における重なり除去問題への適用を行った.2次元図形として,道路ラベルの貼り付け問題,3次元図形としてデータの可視化に用いられる棘付き球を扱った.棘付き球は形状としては複雑な図形であるが図形充填ソルバーの適用により高速に初期配置から図形同士の重なりを除去することができた.この他,図形の充填問題の特別な場合であるグラフの平面描画問題に関し個別に研究を行い,以下の結果を得た. (i) 3点連結グラフに対して知られている平面凸描画を非3点連結平面グラフの場合へ自然に拡張し,そのような描画を得る線形時間アルゴリズムを設計した. (ii) 面に面積指定をもつ矩形平面グラフに対して各面が定数角数の多角形で描かれる直交描画の存在証明とそのような描画を計算する線形時間アルゴリズムを設計した (iii) 枝交差最小グラフ描画問題に対して,定数近似の近似アルゴリズムを設計した.
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