研究概要 |
本研究では,マルチプレーヤを含む伊藤確率微分方程式によって記述される不確定システムに対して,状態フィードバックによるコスト保証制御問題を扱った,主な貢献は,確率的不確定要素をWiener過程に置き換えることによって,状態に依存するノイズとして伊藤確率微分方程式で表現することにより,従来研究では定義できなかった確定的不確定要素を含むNashゲーム問題をパレート最適問題へ読替えた点である.以上により,モデル化誤差による不確定要素および確率的不確定要素に対して,ロバストなパレート最適を実現する制御が実現可能となった,具体的には,従来から報告されているコスト保証制御問題の結果を利用して,平均二乗安定を保証するパレート最適戦略を得るための確率Riccati不等式を導出した.次に,確率パレート最適問題の戦略組を得るために,Karush-Kuhn-Tucker(KKT)条件を利用して最適性の必要条件を新規に導出した.さらに,得られた連立型確率Riccati方程式を解くために,ニュートン法の適用を行った.結果として,得られたアルゴリズムは局所二次収束を達成するため,必要な解を高速に求めることができる.また,同様な問題に対して,線形行列不等式(LMI)による定式化も行った.LMIによる解法によって,低次元でかつ既存の数値計算パッケージを利用して手軽にパレート準最適解を得ることが可能となった.最後に,拡張として,静的出力フィードバックによる問題も考察した.静的出力フィードバックによって,一部の状態が観測できない場合にも,戦略集合を得ることが可能となった.本来,確定的不確かさをもつ確率システムに対して,ナッシュ均衡が定義できなかった問題が,パレート最適問題及びコスト保証制御によって同様な効用をもたらす制御戦略が構築できるようになったことは大変意義深い結果である.
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