研究概要 |
過去の本研究において,伊藤の確率微分方程式に基づく確率動的ナッシュゲーム問題は,新現代ロバスト制御理論の手法によって定式化され,新戦略対の獲得等,様々な有用な結果を得ることができた.しかし,これら一連の結果では,パラメータ変動やモデル化誤差等の不確定要素に対して画一的な理論がないことが欠点となっていた.また,近年の研究成果により,環境変動によってシステムモデルが劇的に変化する場合,非常に保守的な結果となり,最悪十分条件に基づく設計方法では,解が存在しないことが判明してきた.そこで,本年度の研究では,システムパラメータが劇的に変化するシステムを扱う手法として,先進的な試みとして,マルコフジャンプシステムによる解析手法の導入を行った.マルコフジャンプシステムの特徴は,システムの故障や環境変動に伴って,システムのパラメータが変化するといった場合に,制御系設計が行える点であり,本研究でも,そのような確率的不確定要素を含んでいても,ナッシュ戦略を得ることに成功した.従来の結果と異なり,環境変動による不確定要素を,マルコフジャンプ確率システムに置き換えることによって,ナッシュゲーム問題が初めて解かれた点で大きな成果であると考えられる.その他の成果として,戦略対が存在するための必要条件の導出を行った.従来手法では,システムの構造までが変化するようなモデルは扱えないのに対して,本研究の手法では,より一般的な確率システムが扱える点で重要な進展であると考えられる.また,これらの有用性は,適用できるシステムのクラスを格段に拡張できたという意味で大変評価できる斬新な結果であると考えられる.
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