研究概要 |
本研究の目的は,NP困難問題と呼ばれる多項式時間で最適な解を求めるためのアルゴリズムを持たないであろうと予想されているグラフ最適化問題を対象に,最適解に対する近似精度を理論的に保証できるアルゴリズムの設計手法を構築することである.また逆に,多項式時間ではより近似精度の高いアルゴリズムを設計することは理論的に不可能であるという近似限界を示すことにより,近似精度の数値的な指標を与えることを目的とする.今年度の主な研究成果は以下である:(1)直径d部分グラフ最大化問題:グラフGと整数d≧1に対して,直径がdである最大部分グラフをG中から見つける問題である,dの値や様々なグラフクラスに対して近似上界と近似下界を示し,本結果を第9回Latin American Theoretical Informatics Symposiumにおいて公表した.(2)完全二分木グラフの直線埋め込み問題:非縮小制約の下で歪みを小さくすることを目標とする完全二分木グラフの直線埋め込み最適化問題である.高さhの完全二分木グラフに対してθ(2^h/h)の歪みを持つような最適な直線埋め込みアルゴリズムを与えた.本結果をInternational Conference of Foundation of Computer Scienceで公表した.(3)最大支配問題:グラフG=(V,E)と正整数kが与えられたとき,k頂点(またはk辺)支配問題は,高々kサイズの頂点部分集合D_v(またはD_E)の中で,支配する頂点集合(または辺集合)のサイズを最大化するものを求める問題である.本問題に対して,単純な食欲アルゴリズムが近似上界(1-1/e)を達成することを示した.また,P≠NPの条件の下で,頂点問題に対して近似下界(1-1/e)を示した。辺問題に対しては,P≠NPの条件の下で,近似下界1303/1304を示した
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