研究概要 |
計算生物学において極めて重要な網状ネットワーク問題を解く新しいアルゴリズムを2つ設計して実装した.その1つはCMPTと呼ばれ,与えられた複数本の生物系統樹から最少網状点を持つ網状ネットワークを構築する.もう1つはMaafBと呼ばれ,与えられた複数本の生物系統樹から網状ネットワークの最小辺数の下界を出力する.CMPTの時間量は0(k^2n3^<d">十kn6^d2^<-d">+(d-1)^<d-d'+2>6^<d'>2^<-d">)である.ここで,kは入力生物系統樹の本数で,nは各入力生物系統樹の頂点数で,dは入力生物系統樹全体の最大無閉路共通森の連結成分数で,d'は入力生物系統樹全体の最大共通森の連結成分数で,d"は入力生物系統樹の中で最大のrSPR距離を持つ2本の入力生物系統樹間のrSPR距離である.CMPTは複数本の生物系統樹から最少網状点を持つ網状ネットワークを構築する初めてのプログラムである.また,実際の応用でdとd'が近いので,CMPTは実用的なプログラムでもある.さらに,CMPTは入力生物系統樹全体の最大無閉路共通森をすべて列挙することができる.MaafBはCMPTを呼び出して入力生物系統樹全体の最大無閉路共通森をすべて列挙してその性質を調べることによって網状ネットワークの最少辺数の自明ではない下界を計算する.網状ネットワークの最少辺数の自明ではない下界としてRH下界というものが既に知られていたが,MaafBがRH下界よりも大きい下界を求めることができる.その上,MaafBは整数線形計画問題を解くソフトウエアを必要としないので,RH下界を求める以前のプログラムよりも高速である.さらに,MaafBを利用すれば,RH下界を以前よりも高速に求めることができる.その結果,いつもRH下界以上の下界を出力する高速なプログラムを得ることができる.
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