トーラス面に埋め込まれたグラフの分枝幅に対する5/3近似アルゴリズムを開発した。これは、既知最良の(ほぼ自明な)2近似アルゴリズムに対する改良である。この結果は、次のような組み合わせ的な定理に基づいている。グラフGの分枝幅をbw(G)で表し、またトーラスに埋め込まれたグラフGの非分離最短ヌースの長さをns(G)で表す。ここで、Gのヌースとは、トーラス面上の自己交差のない閉曲線でGとの交わりがGの頂点においてのみ起きるようなものを言う。また非分離とは、その閉曲線がトーラス面を切断しないことを言う。ヌースの長さは、その上にあるGの頂点の個数である。このとき、我々は不等式(3/2)ns(G)≦bw(G)が成り立つことを証明した。この定理は、一般の向き付け可能表面に埋め込まれたグラフに拡張することができ、その拡張に基づいて、表面の種数をkとするとき、そのような表面に埋め込まれたグラフの分枝幅に対する(5/3)k近似アルゴリズムを得ることができる。この結果はRobertsonとSeymourによる、平面に埋め込まれたグラフの分枝幅の斜面(slope)による特徴付けのInkmannによる一般の表面への拡張に基づいている。 この結果は、Simon Frasor大のQian-Ping Gu教授との共同研究の成果である。
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