研究概要 |
本研究は,マルチコア技術,特にヘテロジニアスマルチコアが一般的に利用可能になり,さらにメニーコアと呼ばれるプロセッサ構成に向けて技術が進歩してきたという背景のもと,並列処理プログラムに慣れていない一般の利用者も,このような技術進歩の恩恵に浴することを可能とするような並列プログラミングシステムの構築を目的とする. 今年度の研究においては,以下のような成果を得ることができた. ・従来の並列化コンパイラにおけるdoall並列化では十分に扱えなかったリダクションを,半環上の行列乗算を用いて定式化し,コンパイラによる自動並列化を達成した. ・暗号処理を題材とし,その高速化と省電力化の両立を目指すSIMD命令セットを提案した.さらにシミュレーションによりその効果を確認した. ・楽観的な制御に基づく同期機構であるSoftware Transactional Memory(STM)に関して,Javaによる高性能なSIMライブラリおよび同期機構の選択システムを構築した. 以上の成果により,コンパイラによる自動並列化の適用範囲を広げることができ,さらに利用者による同期機構の記述が必要な場合でも楽な記述が可能となるなど,利用者にやさしい並列プログラミングシステムの基盤技術を構築することができた.
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