研究概要 |
ソフトウェア開発において,要求定義段階で定義した必要な品質要求が,設計や実装の段階においても,系統的に継承されていることを確認するために,要求仕様書,設計書,ソースコード内における,品質に言及した成分の量を分析し,可視化するための手法であるソフトウェアのスペクトル分析法を構築した.要求仕様書や設計仕様書に関しては,初年度に考案したスペクトル分析法をそのまま適用した.ソースコードに関しては,以下の手順に従って,スペクトル分析を行った.1.ソースコードのコールグラフを作成する.2.コールグラフ上の実行パスの数に基づき,メソッドに重み付けを行う.3.文章の場合と同様にメソッド毎に,どの品質特性と関係があるかを計測する.4.メソッド毎の重み付けに基づき,品質特性との関係の数に優先度付けを行い,スペクトル分析を行う.考案したソースコードに関するスペクトル分析が意味あるデータか否かを評価するために,組み込みシステムに関する例題に関して,要求仕様書とソースコード双方にスペクトル分析を適用し,意図して実装を忘れた品質特性を識別できることを確認した.加えて,従来の要求仕様書に関するスペクトル分析では,品質要求の重要度ではなく,単に言及度を測定しているに過ぎないという指摘に応じて,仕様書の構成に基づき,重み付けをすることで,品質要求の重要度により近い測定方法を提案した.提案手法が実際の重要度とより一致していることを確認するために,複数の専門家によるある仕様書中の品質要求のランク付けと,提案手法が決定したランク付けが,従来手法より,より一致することを確認した.
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