研究概要 |
本研究の目的は大規模ソフトウェアの科学的な開発管理の一助となるべく,当り前品質である信頼性・脆弱性を総合テスト工程において評価する枠組みを,従来の確率モデルではなく,シミュレーションをベースとして行うための手法を開発することである.具体的に述べるならば,従来に提案された確率モデルが,現実的な信頼性要因を組み入れることによりその実用性が失われていく(パラメータ-数が手に負えないまで増加してしまう)ことに鑑み,より実用的かつ柔軟な信頼性評価モデルを構築するために,確率モデルの枠組みを一旦離れ,すなわち,ソフトウェアのテスト工程から得られるデータの発生メカニズムを確率過程などで捉えるのではなく,もっと自由度の高いアルゴリズムにより表現し,シミュレーションモデルとして現象の表現と再現を行うことを着想した.研究計画の最終年度にあたり,今年度は滑らかではない評価関数をある規範の下で最少とするパラメータを如何にして探索するかについて検討した.結果として取り扱っているデータとモデルの構造が比較的小規模・単純であれば特段の工夫をすることなく,実際にソフトウェアの信頼性を表すパラメータの最適値を求めることが可能であることが判明し,この結果を国際会議にて発表した.一方,ソフトウェア脆弱性の評価のモデルについて,同様なアプローチが可能であることは判明しているが,具体的なモデルとデータ解析には至らず,今後の課題としてこれは残された.
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