本研究は、分散型組み込み制御システム向けの時間駆動ネットワーク対応分散オブジェクト環境と、分散環境での時間保障を考慮したソフトウェア開発法を開発することを目的としている。本年度(平成22年度)は、交付申請書の「研究実施計画」に示したように、(1)時間遅れの予測が可能な時間駆動ネットワーク対応分散処理環境、(2)機能側面とリアルタイム側面を独立に設計可能なソフトウェア開発手法、(3)上記ソフトウェア開発手法をサポートする開発環境の3つの項目について研究を行った。 (1)については、時間遅れの予測が可能な分散リアルタイムOSの開発を行った。すなわち、昨年度開発した分散リアルタイムOSを拡張して、戻り値を扱えるようにするとともにタスク管理機能を強化し、システムコールの最悪実行時間を予測可能な分散リアルタイムOSを開発した。また、(2)については、組み込み制御システムの機能側面である制御ロジックをSimulinkモデルとして設計するとともに、リアルタイム側面の処理をアスペクトとして設計し、それらをツールにより変換・合成することで組み込み制御ソフトウェアを実現できる手法を開発した。そして(3)として、制御ロジックを表すSimulinkモデルを、オブジェクト指向に基づくソフトウェア構造を表現したUMLモデルに変換するモデル変換ツールを開発した。 本モデル変換ツールと、これまでに開発したモデルウィーバと組み合わせることで、(2)に基づく開発を効率よく実現できる。 (1)に関連する成果を国際会議RTES2010、電子情報通信学会ソフトウェアサイエンス研究会で、(2)及び(3)に関連する成果を国際会議ICCSM2010、情報処理学会組込みシステム研究会、電子情報通信学会ソフトウェアサイエンス研究会で発表した。
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