本研究は仮想空間を提供するためのサーバ構成を検討するものである。仮想空間のサーバにおいて、大規模アクセスに対処するためには、特にそのバックエンドにおいて性能の決め手となるストレージシステムをどのように構成すべきかが重要である。前年度(平成21年度)は、オープンソースの仮想空間サーバであるOpenSimを用い、仮想空間サーバの動作時の詳細な振舞を解析した。特に仮想空間は、アクセス時のレスポンスが極めて悪く、これが実用化に向けた課題の1つとなっている。そこでアクセス時のサーバ内部の動作のログの解析を行った。本年度はこの解析結果を基に、アクセスレスポンスの詳細の解明とその性能向上を試みた。 システムとしてはクラスタ型のメタバースサーバを構築して実験を行った。複数台のサーバノードがそれぞれメタバースの機能を部分的に受け持ち、全体として仮想空間が実現される。そのようなクラスタ型サーバが連携した状態において、アクセス時のボトルネックになり得る可能性を列挙し、すべての可能性を調べて行った。その結果、サーバ内のストレージのアクセス速度などは影響が少なく、逆にクライアントの処理能力がアクセスレスポンスに大いに影響を与えている事などがわかった。そこでクライアントの処理能力を上げるなど環境を変更して実験を行ったところ、大幅な性能向上を達成する事ができた。当初の目論見とは少し違う形での仮想空間システムの最適化となって、メタバースは複雑なシステムであるため全体をうまく制御する事は難しいが、目標の一部を達成し、全体の見通しを明らかにする事が出来たと考えられる。
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