研究概要 |
本研究の目的は、27MHz/40MHz帯1Wディジタル無線(チャネル伝送速度1,200bps)を用いた海上無線アドホックネットワークの実現に向け、送信電力制御によりスループット特性を改善することにある。 本年度は、送信電力制御と組み合わせる経路制御アルゴリズムの候補として、AODV、 OLSR、 ZRPを、オーバーヘッド、データの到着率、通信成功率、スループット、遅延時間の観点から、商用シミュレータQualNetを用いて比較することを計画していた。このうちZRPは、27MHz/40MHz帯1Wディジタル無線で用いられている仕様(物理層パラメータ、メディアアクセス制御層パラメータ)に変更した条件下では、ZRPの制御パラメータを調整しても正常に動作しなかった。そこで、ZRPを候補から外し、同じくハイブリッド型に分類されるFisheyeを加えて実験を行った。その結果、船舶が静止しており、セッション数が10本以下の場合では、船舶数(50〜200隻)に関わらずAODV、 Fisheye、 OLSRの順にオーバーヘッドが大きくなることがわかった。 また、典型的な漁業操業形態を調査してシミュレーション上に構築した船舶移動モデルを用いて、AODV、 OLSR、 Fisheyeの比較を行った。その結果、送信データレートを変化させても、近く(5km未満)の船舶間通信は、AODVが高いスループットを示した。一方、遠く(5km以上)の船舶問通信では、送信データレートが大きくなるにつれ、OLSRが高いスループットを示した。 これらの結果から、基本的に近くの船舶間での通信が多いため、AODVを候補プロトコルとする。来年度は、この経路制御プロトコルに電力制御を施し、シミュレーション評価を行う予定である。
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