研究概要 |
本研究計画の最終年度にあたる平成22年度には,これまでの研究を継続しモバイルエージェント群からなるコンテンツ配信システムの完成を目指した.その際,ユーザインターフェイス-エージェント間,あるいはエージェント間の情報のやり取りは,Maglogフレームワークが持つフィールドと呼ばれる環境を経て行うこととした. これまでの研究により開発したコンテンツ・エージェント群が自律的にシステムに参加している複数の計算機上に分散配置する具体的な仕組みを元に,具体的なシステムの開発を行った.すなわち,モバイルエージェント技術の特徴を積極的に利用したe-Learningシステムと人物追跡システムである.昨年度までの研究成果による,モバイルエージェントがシステム内に自律的に分散管理される仕組みに加え,本年度はコンテンツ・エージェントが大きなデータを保持する場合について研究を進めた.例えば,e-Learningシステムで音声や動画を用いる場合である.この場合には,音声や画像データあるいは動画データをコンテンツ・エージェントが保持する必要があり,その大きさは非常に大きなものとなってしまう.それにともない,そのエージェントがシステム内を移動するための所要時間も大きなものとなってしまい,システムとしての機能を妨げてしまうことになる.本研究では,このようなコンテンツ・エージェントを複数のメディア・エージェントとして管理し,必要に応じてこれらを連続的に移動させることにより,システム全体としての応答速度の問題を解決を図った.以上の動作においてもこれまで研究を重ねてきたように,システムへの計算機の参加離脱が繰り返された場合でも,コンテンツ・エージェントあるいはメディア・エージェントを自律的に分散管理することは可能である.このような動作は,モバイルエージェント技術特有の性質を利用したものであり,システム自身の新規性とともにモバイルエージェント技術に対する新しい知見を与えるものと考えている.
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