研究概要 |
本研究では,DTNの数理モデルにおける情報伝播特性の解明,および様々な目的に対する効率的な蓄積転送に関するアルゴリズムの設計を行っている.平成20年度は,主にノードが移動するモデルについて検討を行った. まず,DTNの数理モデルにおける情報伝播特性の解明に関して,特にノードが移動するモデルにおいて,すべてのノードが他のすべてのノードの情報を収集することを目的とするDTNを対象に,ランダムウォークに関する理論を用いて情報伝播特性,特に情報の伝播速度や情報収集に必要な時間を調べた.その結果,情報収集時間分布がべき分布に従うこと,およびノード数の増加に応じてべき指数が変化し,ノード数がある閾値を超えると効率が大きく向上する相転移がみられることを明らかにした.したがって,現実的な状況のノード数であれば,伝搬のみでも比較的効率的に情報伝搬が可能であることがわかった. 次に,情報蓄積転送に関するアルゴリズムの設計について,ノード同士が近接した時のみ情報を伝搬させるだけでなく,遠距離をショートカットする固定ネットワークを組み合わせることにより,情報伝搬効率を向上させる方式について検討した.この方式の性能を最大限引き出すためのネットワーク設計法を離散最適化問題として定式化し,NP完全性を示し,効率的なヒューリスティックアルゴリズムを提案した.さらに,高速で移動するノードへの情報配信方式について検討し,ストレージ容量を抑制しつつ配信効率を高く維持する効率的な制御アルゴリズムを提案した.
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