研究概要 |
本研究では,DTNの数理モデルにおける情報伝播特性の解明,および様々な目的に対する効率的な蓄積転送に関するアルゴリズムの設計を行っている.平成21年度は,主にノードが移動するモデルについてさらに検討を行った.まず,DTNの数理モデルにおける情報伝播特性の解明に関して,本年度は有限領域の場合や,グラフ構造の場合について扱った.特に,ノードが移動するモデルにおいて,すべてのノードが他のすべてのノードの情報を収集することを目的とするDTNを対象に,ランダムウォークに関する理論を用いて情報伝播特性,特に情報の伝播速度や情報収集に必要な時間を調べた.その結果,情報収集時間分布が有限領域においては指数的であることを示し,ノード数の増加や領域サイズに応じた緩和時間の変化について明らかにした.さらに,空間がグラフ構造の場合,グラフの直径と情報収集時間の関係について明らかにした.これらの結果より,現実的な環境においては,伝搬のみであっても効率的に情報伝搬が可能であること,また効率化するための空間構造の特徴がわかった. 次に,情報蓄積転送に関するアルゴリズムの設計について,ノード同士が近接した時のみ情報を伝搬させるだけでなく,移動経路が固定されている複数の移動ノードを組み合わせることにより,情報収集効率を向上させる方式について検討した.ここでは,このような移動ノードから適切に選択することにより,情報収集効率を向上できることを,実データに基づいて検証した.また,近接した時のみ情報を伝搬させる機能を有する複数のノードがグラフ構造上を規則的に移動する場合の情報収集アルゴリズムを設計し,その有効性を評価した.さらにこれらを組み合わせることにより,未知のグラフ構造上を探索してその構造を推定する問題を扱った.これは災害時の建物内通行可能領域の推定などに適用することができる.この問題に対して,構造推定アルゴリズムを設計し,有効性を評価した.
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