研究概要 |
本研究では,DTNの数理モデルにおける情報伝播特性の解明,および効率的な蓄積転送に関するアルゴリズムの設計を行った.まず,DTNの数理モデルにおける情報伝播特性の解明に関して,ランダムウォークに関する理論を用いて情報伝播特性を調べた.その結果,情報収集時間分布の裾が冪的に減衰すること,およびノード数の増加に応じて冪指数が変化し,ノード数がある閾値を超えると効率が大きく向上する相転移がみられることを明らかにした.また,ノードが動きうる空間構造が有限領域ならば,情報収集時間分布の裾が指数的に減衰することを示し,ノード数の増加や領域サイズに応じた緩和時間の変化について明らかにした.さらに,空間がグラフ構造の場合,グラフの直径と情報収集時間の関係について明らかにした.これらの結果より,現実的な環境においては,伝搬のみであっても効率的に情報伝搬が可能であること,また効率化するために必要な空間構造の特徴がわかった.次に,情報蓄積転送に関するアルゴリズムの設計について,ノード同士が近接した時のみ情報を伝搬させるだけでなく,遠距離をショートカットする固定ネットワークを組み合わせることにより,情報伝搬効率を向上させる方式について検討した.この方式の性能を最大限引き出すためのネットワーク設計法を離散最適化問題として定式化し,NP完全性を示し,効率的なヒューリスティックアルゴリズムを提案した.また,近接した時のみ情報を伝搬させる機能を有する複数のノードがグラフ構造上を規則的に移動する場合の効率的な情報収集アルゴリズムを設計し,その有効性を評価した.さらにこれらを組み合わせることにより,未知のグラフ構造上を探索してその構造を推定する問題を扱った.これは災害時の建物内通行可能領域の推定などに適用することができる.この問題に対して,構造推定アルゴリズムを設計し,有効性を評価した.
|