研究概要 |
ガス状物体として動的な雲の輝度の高速計算法を開発した.動的な雲の密度分布は前もって用意された複数の密度分布(基本密度分布と呼ぶ)の線形結合により表す.そして,雲の輝度を高速に計算するため,それぞれの基本密度分布に対し,前もって輝度計算に必要な中間データを保存しておく.具体的には,基本密度分布の任意の2点間を結ぶ経路での光の減衰率をあらかじめ計算して記憶しておく.このとき,データ容量が膨大になるため,階層構造を用いてデータを削減して記憶する.この中間データを保存しておくことにより,任意の照明条件下での雲の輝度分布を,多重散乱を考慮した上で,高速に計算することを可能とした.通常,多重散乱を考慮して雲の輝度計算を行うためには,数分の計算時間が必要となるが,提案手法により,0.1秒以下で計算することが可能となり,これまで不可能であった動的な雲のリアルタイムレンダリングが可能となった. 次に,動的に移動・変形する物体の輝度を高速に計算する手法を開発した.二つの手法の開発を行った.いずれの手法も,まず,動物体を球の集合で近似することで影計算の高速化を図る.そして,影計算の方法が異なる二つの手法を開発した.影の計算は,計算点から見える光源の範囲(可視範囲)を決定することで計算される.一つ目の方法は,球の境界と計算点の法線とのなす角の最大値または最小値を用いて近似的に可視範囲を計算する方法で,極めて高速計算が行える.ただし,精度的には問題がある.この部分を改良したのがもう一つの方法で,より正確に可視範囲を算出する.具体的には,計算点から見える領域を格子状に分割し,各格子ごとに可視範囲の算出を行う.これにより,計算速度は若干低下するものの,リアルタイム性を保ったまま,高精度に影計算を行うことを可能とした.この方法により,拡散反射だけでなく,これまで困難であった動物体に対する鏡面反射による輝度計算も高速かつ高精度に扱うことを可能とした.
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