研究概要 |
本研究では,申請者が開発してきた仮想彫刻版画手法を拡張することで,実世界の様々な美術工芸技法を取り入れた物理モデル駆動に基づく三次元CG作成手法を開発する.そして,この手法を取り入れたCGシステムによって,CG制作をより多くの人々にとって身近なものにするとともに,システムを教育,芸術,美術工芸デジタルアーカイブなどに応用し活用することを目的とする.そこで平成20年度には従来の仮想彫刻版画手法を他の様々な工芸技法に対応させるために,素材描画,形状生成等に関する基盤技術の改良・拡張を行い,対話的CG作成システムの基本性能を向上させた.そして,平成21年度には,美術工芸技法として日本の代表的な伝統工芸技法である漆工と,漆工装飾技法である沈金に着目し,これらを仮想空間で実現する手法の開発を行った.漆工および沈金の制作工程を調査解析することにより,物理モデル駆動に基づく漆工沈金のシミュレーション手法を開発してシステムに実装した.この中では,描画手法にポイントベースレンダリングを併用させるとともに,仮想彫刻手法の形状変形手法および三次元テクスチャ生成手法を拡張することで,仮想空間での対話的な漆工沈金を実現した.システム開発の際には漆工沈金を用いた大名道具などの美術工芸品を多く所蔵する徳川美術館の学芸員との定期的な研究会を実施して,意見交換や情報収集,開発システムの検証なども行った.また提案手法の応用として,中央アジア石刻画の仮想空間での再現および汚れ除去に関する検討も行った。そして,これらの研究成果は国際シンポジウムや国際会議で発表を行った.
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